2015/09/26

セイリングデイブッフェの作り込み

【TDSハロウィーン】ヴィランズの手下たちに会える!「セイリングデイ・ブッフェ」アトモスフィアショー&限定ブッフェ - ディズニー特集 -ウレぴあ総研
2015年東京ディズニーシーのハロウィンに登場するヴィランズの手下たちはディズニージャンル以外の二次創作界隈にウケがよく、エンドバニーを上回る勢いで思いがけないジャンルでもイラストを見かける程広まっている。
彼らとグリーティング、要は触れ合えることからその会場であるセイリングデイブッフェは連日大賑わいであるが、しかし本来このレストランは隣で処女航海を待つコロンビアと密接に関わっており作り込みやバックグラウンドストーリーに目を向けてみると大変面白い。どうせ行くならこっちにも関心を抱いて欲しいという無駄な期待を込めて本記事ではセイリングデイブッフェそのものについていくらか偏った解説をしてみる。
…もちろん隠れミッキーは抜きでな!(シャバーン調で)
 
・セイリングデイブッフェとは
セイリング

今日は、豪華客船S.S.コロンビア号の船出の日(セイリングデイ)。客船を所有するU.S.スチームシップカンパニーでは、大統領や著名人を招いて行う祝賀会場として、貨物ターミナルや機械作業所、オフィスをダイニングエリアに変えました。パーティー会場には、世界各国の料理が盛りだくさん!どうぞごゆっくりお楽しみください。 東京ディズニーシー公式サイトより
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↑Pier54、54番埠頭と表記される扉

ユナイテッドスチームシップカンパニー(以下合衆国汽船)の埠頭であるニューヨーク港の54番埠頭。外壁やトイビルトロリーパークの地図で確認できるがここは史実においてキュナードのメインターミナル。
近年コロンビアの処女航海設定が薄れつつあるらしいが、本来のストーリーはコロンビアの処女航海を祝う祝賀会場でありだからこそ「船出の日=セイリングデイ」の名前を冠しているのだ。すでに現時点で1912年3月20日(コロンビア処女航海)、同年9月4日以降(タワーオブテラーホテルツアー開始)、1920年代(ビッグバンドビート)と三つの年代が同居しているのでいまさら捨てることもあるまい。

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↑『817 Acres Coast Transit Co.』より工事現場の総合案内。

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↑RipBang Studiosよりコロンビア・ボンヴォヤージュ・ブッフェのデザイン画。

なお計画及び建設中は「コロンビア・ボンヴォヤージュ・ブッフェ」であったことは建設中の写真(『817 Acres Coast Transit Co.』より『舞浜リゾート線 沿線風景の移り変わり』)やデザインに関わった事務所RipBang StudiosPDFに掲載されるデザイン画からもわかる。

・ターミナル
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入ってすぐ正面は貨物ターミナル。頭上に世界中へ送る貨物が置かれている。

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新聞大容量
↑ニューヨークグローブ通信3月20日号より『コロンビアの就航を祝うルーズヴェルト』
中央のトロッコを用いた式台ではセオドア・ルーズヴェルトが演説を行ったことがタートルトークの待機列にあるニューヨークグローブ通信で触れられている。手下達も乗らないものかね?

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↑持ち船の入出港一覧
港や船名を見てみると大西洋に留まらず上海まで足を広げたりマーク・トゥエインの本名であるサミュエル・クレメンス(東京ディズニーランドのみならずこちらにも蒸気船マーク・トゥエインがいるわけだ)がいるなどなかなか楽しい。
もちろんコロンビアの名前もある。READY TO SAIL!とは粋であるな。

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↑黒板の左にはコロンビアにちなんだ絵や図面などが飾られる。

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↑カラースキームとダイニングルームの比較。二枚ともほぼそのまま実現していることがわかる。

ここにはセイリングデイブッフェで一番注目して欲しい絵がある。それはS.S.コロンビアダイニングルーム、つまりコロンビアの一等ダイニングの「カラースキーム」だ。
カラースキームとは客船のインテリア設計に用いるデザイン画のことでありカラー写真が数少ない戦前の客船インテリアを現在に伝える貴重な資料でもある。『豪華客船インテリア画集』や横浜みなと博物館企画展図録『豪華客船インテリア画展』などの書籍にまとめられているがそんなものまで模するとはさすがはイマジニアだ!…ともかく、コロンビアの内装のデザインと聞いてアトラクションの登場人物を思い浮かべないだろうか。そう、合衆国汽船令嬢にしてホテルハイタワーのツアーを主宰するニューヨーク市保存協会会長ベアトリス・ローズ・エンディコットである。
今は亡きタワーオブテラー特設サイトtot1899.com(『それはむずかしい』より『TOT1899.comのまとめ』にログが掲載される)によれば彼女が「中央アメリカに建設中のパナマ運河を称える意味で、美しいトロピカルなイメージ」をダイニングのテーマにしてまとめたという。カラースキームは時として設計者本人が描くことを踏まえるとエンディコット女史自身によるものとも解釈できるのだ。
つまりここセイリングデイブッフェはカールッチビルと並びタワーオブテラーの関連地でもあるが、君は名前すら見かけないが一体どういうことかねニューヨークグローブ通信記者のマンフレッド・ストラング君!

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↑ダイニングの敷物とカーテンのサンプル。これもカラースキームと共に内装のデザインに用いたのだろう。

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↑現物と比べいくらかモダンに描かれるコロンビア。なんだかノルマンディ風ではある。

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↑救命艇を吊るすダビットの広告の一文"OLYMPIC & FIFANIO"に注目。実は後者のFIFANIOなるイタリアチックな船名はイマジニアのコロンビアに込めた意図を読み取れる手がかりだが…詳細は我が同人誌『合衆国汽船三軸定期船コロンビア号』にて。


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↑トイレへの通路にはコロンビアを描いた絵画が 船内階段踊り場に飾られるものよりも幾分かスマートに描かれている。
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↑絵画の反対側には埠頭で働く労働者のタイムカードなど。

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カレンダーのコロンビアは現物と比べて明らかに姿かたちが違うが、これはドイツの客船ファーターラントVaterland(1914)を引用しているからである。ドイツ船とはいっても第一次世界大戦で賠償として引き渡された後リヴァイアサンLeviathanとしてアメリカ最大客船のタイトルを50年保った経歴を持つのであながち場違いでもないが、そりゃノルマンディNormandie(1935)が登場するまで世界中のどの軍艦すら上回る巨船(トン数はコロンビアの倍以上54,282トン)だから違和感を感じてもしょうがないわな。

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↑平賀譲資料より『講演用壁掛図表:帝国巡洋戦艦及英国商船比較図』
ファーターラントの姉妹船マジェスティックMajestic(1922)と八八艦隊の比較。巡洋戦艦(いわゆる13号型、だったはず)がシルエットにすっぽり比べるほどの巨体であることが一目瞭然である。


・作業場
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右手は表にレシプロエンジンのクランクが、内部には様々な工具類やスペアパーツが置かれ一段と雑然とした作業場。『ドナルドのボードビルダー』が上演されていた頃のケープコッド・クックオフと比較しても楽しいだろう。

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埠頭に停泊する客船に荷物を積み込むベルトコンベアが頭上を通るがよくみてみると途中で明らかに詰まっている。
東京ディズニーシーのバックグラウンドストーリーといえばタワーオブテラーのようなマクロな設定(OLCの資金力を背景にしたイマジニアの良心的暴走ともいう)が有名だがこんなちょっとした作り込みにもミクロなストーリーが込められている。マーティ・スクラーの言葉を借りるならば「全てのものがストーリーを語る」のだ。


・合衆国汽船本社
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正面向かって左側の区画はコロンビアを所有する合衆国汽船の本社であり他の二箇所と違い整った内装。
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↑ホテルハイタワーはまさに目の上のたんこぶであり社長のコーネリアス・エンディコットがホテルを解体したがるのも道理という奴だ。

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↑タートルトークができるまでは園内唯一だった断面図。二本煙突なのでコロンビアの姉妹船フーサトニック?

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↑三本煙突のコロンビアと比べ少々古めかしい四本煙突船はキャプションによればアメリカ海軍マウント・バーノン。
なぜ海軍の船が?と思われるだろうがこれも詳細はコロンビア本もしくは過去の記事にて。

レストランそのもの、それもコロンビアに関する部分だけでもこれだけの事柄があることがおわかりいただけただろうか。これらのような作り込みやストーリーは単なる雑学やトリビアとして、あるいは隠れミッキー探しの場としてしか扱われないが、そんな扱いがもったいないほど濃度が高いから手下のついで構わないのでこちらにも興味を持って欲しい。
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