2018/04/12

エンドバニーの受容史─外から見た舞浜の発見

あるいは『「丸三つでも消される」から「丸三つでなければ大丈夫」への変化』

春たけなわだが春と言えばイースター、イースターと言えばエンドバニー!いやまあ実際のところ「イースタービーグルがイースターエッグを配る日」という認識だが。ピーナッツが大好きなのだ。
ともかく舞浜の外からいかにパロディされてきたかエンドバニーを中心に見てみようという話が今回の記事。アナ雪やベイマックス、手下ばかりが一般的なブームとして目立つが、実のところそれ以前から相当広まっていることがエンドバニーからわかる。

・エンドバニーとは

2010年から12年にかけて上演された春季パレード、イースターワンダーランドのダンサー。舞浜の衣装としてはホーンテッドマンションのキャストと共に相当な知名度がある。
当初のツイッターにおけるディズニージャンル内ではバニーソと呼ばれていたが後にエンドバニー呼びが定着した。ダンサーの呼び名は公式ではないので定着するまで二転三転することも多々ある。


・ファンアート─そのものとダブルパロディ
Pixivエンバニ
【うさミミ帽子が可愛い♡】エンドバニー特集 - pixivision
イラスト投稿サイトPixivでは2015年にディズニージャンルで初めての特集が組まれた。開設当初はディズニーのイラストを自主規制により削除していたPixiv(参照:その他いろいろ, ◎削除報告メール)がディズニーの特集を組むことに忌避風潮の薄らぎが表れているが、その初めての題材がエンドバニーという点に注目。なにせヴィランズ(【名悪役がここに集結!】ヴィランズ特集)やズートピア(【夢を信じて!】ズートピア特集【ウサギとキツネの凸凹コンビ♪】)より早いのだからディズニー界隈に走った衝撃は相当なものだった。



↑初年度に描かれたダブルパロディの一例。ご覧の通り前年度のハロウィンパレード、リ・ヴィランズもよく描かれている。



Pixivを遡ればエンドバニーが初演当時から多数描かれていたことがわかる。しかしそのものだけではなく特集の後半に見られるダブルパロディの一種、他のジャンルのキャラクターに衣装を着せるパロディも多い。この衣装扱いが舞浜以外からの視点として特筆に値すると考えるのでこのパロディを取り上げる。

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隔月刊・枢やな _ Devils 6th Day(2012年10月20日)

このパロディはプロの漫画家も描いている。例えば『黒執事』の作者は2012年にウェルカムトゥスプーキーヴィル(2010~2012)のミッキーと執事(ミッキーフロートのダンサー)をパロディした。

オタクに恋は難しい14
ヲタクに恋は難しい - pixivコミック _ 無料連載マンガより。連載元のPixivに特別編として掲載されていたが現在は削除。電子版のサンプル(ヲタクに恋は難しい 3巻 :無料・試し読みも!コミック 漫画(まんが)・電子書籍のコミックシーモア)で該当部分を読める。
クローズアップ
↑上記拡大。描かれている男女ダンサーはミッキーフロートのダンサー。

そして2016年の漫画『ヲタクに恋は難しい』3巻14話ではこんなことも描かれている。オタクな男女が明らかに東京ディズニーランドな遊園地でオタクな言動を抑える遊びをしているがついつい出てしまう。その中の一つがヒッピティホッピティスプリングタイム(2013~2016)のダンサーを見て「衣装可愛い、嫁に着せたい」という一コマ。要は商業漫画で取り上げられるほどダンサーのダブルパロディが浸透したと示している。
「ディズニーランドのデート」自体がダンサーのダブルパロディと並ぶ二次創作の定番ネタでもあるので二重のネタになっているのがミソか。

ホンテ
↑ひとつ気になる点として、ダンサー以外もホーンテッドマンションやスプラッシュマウンテンなど東京ディズニーランドの園内各所をそのまま書いている一方でホンーんテッドマンションのキャストは典型的な魔女風のデザインに変更している。

・コスプレ

エンバニ2
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コスプレも他ジャンルからの視点として欠かせない。イラストより多く見つかるので、近年はパレードダンサーというよりもレイヤーの衣装として知名度があるような気がしないでもない。レイヤーの事務所の看板にもなっているほどなのでよほどだ。

エンドバニーはハロウィン期間の仮装でもよく見かけるが、仮装時に使われるツイッターのタグ#Dハロ仮装やコスプレイヤーズアーカイブ(ダンサーのコスプレ写真 東京ディズニーリゾート - コスプレイヤーズアーカイブ)などを見るとディズニー界隈だけではなくレイヤーもかなりいるのだ。
111231_010a.jpg【C81】コミックマーケット3日目 コスプレリポート Free Fallより。他にもニュースサイトでも取り上げられた記憶がある。
コミケのコスプレでは少なくとも2011年に確認できる。以前からホーンテッドマンションのキャストが制服趣味において人気だった(自分も2010,11年ごろのコスプレ広場で見かけたことがある)がダンサーのコスプレの目撃例はこれが初と思われる。

・商業作品におけるパロディ
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【ブルジュラ】キャラクターグッズ _ ポプテピピック【原作版】:STEAMBOAT DIVE Tシャツより蒸気船ウィリーをパロディしたTシャツ。元ネタのポスターのロゴもうまく配置したよくできたパロディ。漫画本誌やグッズ販売を見ればアニメでもやろうと思えば普通にできたのであり「圧力」は単なるプロレス芸だとはっきりする。…ここまで言わないと本気で信じ込むんだからまったく…。

某ポプテピピック5話ではnice boatとひっかけた夢の国チキンレースネタを展開して受けていたが、本国のシンプソンズやサウスパークなどは無論のこと日本でもそのものを描いたパロディは盛んに行われているので今更感が強かったりする。この問題はネタそのものではなく本気で信じ込む、あるいは便乗していじりのつもりで真面目な話題でも危ない止めろと連呼する層にあるがそれはさておく。

東京ディズニーリゾートは今まで何度も取り上げてきたように『Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』や『プリンスオブストライド』11話などあまたの作品で遊園地として「出演」しており、ダンサーも先の漫画で描かれているように様々な商業作品でパロディされている。

ソウルキャッチャーズ52話
↑管崎舞(右から2人目)、歌林優菜(同4人目)、奏馬俊平(左から1人目)に注目。


例えば先のヒッピティホッピティスプリングタイムはジャンプでパロディされている。吹奏楽漫画『SOUL CATCHER(S)』5巻52話に登場する三人がこのパレードの衣装を着ているのだ。設定画を見ると左上にイースターと記されているがシェフやランナーの服装はイースターと直結しない。そしてこの場面は幼稚園で「ジブリ・ディズニー・日曜朝のスーパーヒーロー・アニメ…」の曲を演奏するシーンなのでイースター自体は関係ない。よってヒピティのパロディと判断してよい。
このような商業作品のパロディでエンドバニーが用いられることが特に多い。

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ミニアルバム『nsum~中川翔子がうたってみた!~』のカットと『10元突破!SHOKO NAKAGAWA LV UP LIVE 超☆野音祭』のライブ写真(20枚)より

まず中川祥子の2012年のライブ『10元突破!超野音祭』の衣装がボンネットと髪以外エンドバニー。以前の忌避風潮記事で挙げたように握手会で直接由来を聞いたとする証言ツイートもあったがこれは現在削除されている。

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スカイラインのイマキラク Mai Kuraki Happy Happy Halloween Live 2012!! - livedoor Blog(ブログ)より写真左上のバックダンサー。なお引用先のブログでは2012との表記だが架空戦記ならぬ架空ライブ、らしい。

ちなみに知る限り一番早いダンサー関係の商業パロディは同じくライブ衣装で、倉木麻衣の『HAPPY HAPPY HALLOWEEN LIVE 2010』に見られる。ライブの曲の一つ『不思議の国』のバックダンサーがミステリアスマスカレード(2009~2010)のダンサー衣装。これを念頭に置くと城のシルエットを用いたライブのロゴもパロディっぽく見えてくる。

ペコちゃん
不二家公式サイトより。現在は最新版に更新されている。

エンドバニーのパロディとして話題になったものは2013年のペコちゃんがある。しかしどちらかといえばタイツやデカうさ、帽子はバニトラの組み合わせに見える。強いて言うなら裾の処理にエンドバニーの面影があるように思えるがこれらのハイブリットか?

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『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』で新イベントスタート パジャマ海未ちゃんがもらえる……だと? [ファミ通App]より


ソシャゲ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』で2013年に開かれたイベント『月まで抱いて Love*Heart』の限定衣装『園田海末[幸運の白うさぎ]』は色違いながらボンネット以外デザインはそのまま。色を置き換えてみれば一目瞭然だ。
ラブライブは他にも『Music S.T.A.R.T!!』のPVが東京ディズニーシーっぽい背景だが、園田海末の声優が三森すず子であることがこれらパロディに関係するかどうかは定かでは無い。


ランウェイガールシーズン
「ランウェイガールシーズン」をApp Storeで - iTunes - Appleより

サンデーの漫画のソシャゲ『神のみぞ知るセカイ〜SoulMemories〜』にも2014年にエンドバニーのパロディが登場、マイナーどころではランウェイガールシーズンという2014年のゲームは髪以外完全に丸写し。他と違いこれらはボンネットもデザインしている。


バニーパレードコーデ
1弾に登場するプレミアムレアドレスを紹介!!|ニュース|データカードダス アイカツフレンズ!より。「バニーパレードコーデ」がエンドバニーと言われることもあるがさすがに違うだろう。「バニーパレード」の名前はいかにもパロディを思わせるが…。
ちなみにアニメ『アイカツスターズ!』96話には東京ディズニーランドホテルが出演している。

↑エンドバニーではないが『おそ松さんのニートスゴロクぶらり旅』の「イースターアイドル」がローラーや膝の当て布、頭の花飾りからローラーバニーを彷彿させる。これでシャツがもう少し似ていれば確実にパロディと言える。

↑2018年のジョイサウンドのアバターは右端が被り物以外はエンドバニー。このぐらい似通わないとパロディと断言できない。

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「アイドルマスター SideM」でイベント「ハロウィンナイトパーティ2016」が開催に - 4Gamer.netより。台詞もミステリアスマスカレードっぽいのはずいぶん力を入れたパロディと見るべきか。


・舞浜の外からの発見と忌避風潮の変化─「丸三つでも危ない」から「丸三つでなければ大丈夫」へ

↑本記事はくらむじぃさんのツイートに多大な影響を受けている。

何だかんだでエンドバニー以外も取り上げたが、それだけ東京ディズニーリゾートのダンサーが商業・非商業ともに盛んにパロディされている現状がおわかりだろう。
イースターワンダーランド以前のショーパレではリ・ヴィランズやミステリアスマスカレードも人気なのだから盛り上がり自体はエンドバニーに始まった話ではない。しかしエンドバニーは段違いにパロディされている。特に商業におけるパロディはエンドバニーがトップクラスでリ・ヴィランズの商業パロディは知る限り一つしかない。初年度から8年、再演から6年も経過した後もこうして盛んにパロディされているというのは、一般的なブームとして目立つアナ雪や手下以外の舞浜の外による「発見」として注目に値する。
要約すると、ツイッターでお世話になっているくらむじぃさんの「舞浜系のキャラやデザインが非舞浜層に”発見”された大きな(SNS全盛時代ではおそらく初の)契機の一つ」が最も簡潔かつ適切なエンドバニーの影響力の評価と思われる。


これだけパロディされているのだから忌避風潮はとっくにすっ飛んだのでした…とはいかない。ディズニーで普通に同人活動ができると立証された現在においてなおディズニーが昔の間違った認識で引き合いに出されたり古色蒼然とした夢の国チキンレースネタが受けているようにしぶとく生き残っている。
忌避風潮は緩んだと同時に変化したのではないかとこれらエンドバニーなどのパロディを見て思うのだ。

↑ツイッターに未登録もしくは設定「不適切な内容を含む可能性のある画像/動画を表示する」にチェックを入れていると表示されないかもしれないが上記ツイートにエロシーンは含まれないのでご安心を。

拡大その1拡大その2
↑『歌い手のバラッド』2話より抜粋。アリエルは顔をぼかしつつそのまま描く一方でミッキーにはモザイクを掛けている。
↑良いか悪いかは別として表紙にそのまま出していた80年代より後退しているとも言える。
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File Resort gateway station.jpg - Wikimedia Commonsより文字通り「丸三つでも危ない」を地で行くWikipediaの写真。駅のロゴとモノレールの窓に注目。

一つの例として。コミックLOの18禁漫画『歌い手のバラッド』2話に『ヲタクに恋は難しい』と同じように東京ディズニーシーをデートするシーンがある。ここではマーメイドラグーン(アリエル、トリトンキャッスル)、トイストーリーマニアなどが背景として登場する。エロ漫画にパークをそのまま出す、それは大変結構。「漫画の背景にシンデレラ城を出すだけで莫大な使用料を請求される都市伝説」「自主規制により園内の写真を掲載しないどころかロゴや窓までモザイクをかけたWikipedia」からはっきり前進しているのでむしろ感心する…。

ところがビッグバンドビート(劇中では”BJB”と表記)のシーンでは大ゴマのど真ん中のミッキーにモザイクがかかっている。しかも明らかにBBBではなく普段の格好なので単にBBBの写真を加工したのではなくわざわざ書き加えているように見える。モザイクするぐらいならミッキーがいないシーンを使えばいいだろうにここでモザイク芸をするのは不可解だが、そもそもアリエルや東京ディズニーシーは何も変えない一方でミッキーは伏せるというのもまたおかしい。両者ともディズニーには変わりないではないか。

ここまで散々触れてきたエンドバニーにしても「ディズニーには関わらない」だ何だとマナーサイトなどが盛んにディズニーの『危険性』を流布したにも関わらず商業・非商業問わずパロディされているのはなぜか?そこに忌避風潮の衰退と共にディズニーは全て危ないとする「丸三つでも危ない」からミッキーさえ触れなければ構わないとする「丸三つでなければ大丈夫」への変化が表れていると言える。
「以前は厳しかったがアナ雪から規制を緩くした」「ミッキーはダメだがそれ以外は許している」」なんて事実も公式の文言もどこにも無いが、アナ雪やベイマックスのブームが広まった2015年頃からこの謎理論が浸透、ブームと風潮の変化が鶏と卵の関係のごとく混ざり合ってダブルパロディの隆盛や依然として続くミッキーの危険視(または揶揄)につながっていると見るがどうだろうか。

余談。ダブルパロディについてはせっかく描くのなら他ジャンルの衣装扱いではなくそのものとして描いてくれてもいいじゃないか…とは思う。しかしそれは個人的な感想であり関係ない。公式が何も言わないのだから大いにパロディすればいい。しかしパロディが盛んな横で未だに極端な危険論が流布するというのはさすがにおかしいのではなかろうか。

最初はエンドバニーのパロディをまとめるだけだったはずだが、結局忌避風潮記事の延長線になってしまった…。
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コメント

非公開コメント

記事内容、興味深く拝見させていただきました。
ただ、エンドバニーが群を抜いて広まったのは、未だ日本では馴染みの薄いイースターをわかりやすく記号化するために、たまたまちょうどいいシンボルとして登場したからなのではと思います。
一目でウサギモチーフであることがわかる、春らしく可愛らしいデザインは、目新しい上にとても印象的です。
そして、エンドバニーがディズニー発信であることには、恐らくあまり意識を向けられていないことでしょう。
いわばクリスマスの赤い服を着たサンタと同様の感覚で、エンドバニーコスチュームを描いているのではないかと邪推しています。
サンタのビジュアルからコカ・コーラを想起する人は、そう多く居ないように。

余計な戯言、失礼しました。
他のブログ記事も面白く拝見させていただいています。これからも応援しております。

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。承認がかなり遅れてしまい申し訳ないです…。

ツイッターでも同様の感想が数多くあります。
実際のところ、おっしゃる通りエンバニ自体の人気と共に(それ以上かもしれません)「イースターの可愛いアイコン」であることが重要なポイントでしょう。
そもそもイースターが商業的に広まったきっかけはハロウィンと同様に舞浜なのですから、他がエンバニを格好のデザインとして用いて独り歩きしてもおかしくありません。

記事には無い視点を指摘して頂きありがとうございました。これからもよろしくお願いします。